製造物責任法(PL法)の施行、規制緩和による企業責任の明確化、環境問題に端を発した『室内気候』に対する生活者の関心の高まり、それに伴うマスコミによる環境報道の顕在化などは、業界全体による横並びの対応では処理しきれない状況を生み出しています。室内の空気がさまざまな化学物質により汚染されるという生活者にとって危機的な報道がマスコミを通じ、テレビ・雑誌等で取り上げられました。『ハウスシック病』『新築病』『シックハウス症候群』『シックビル症候群』『化学物質過敏症』等、その呼ばれ方もさまざまです。その原因は建物の高気密化・高断熱化を特徴とする省エネ住宅、省エネビルの登場で、主に換気に対する配慮が欠けた為、このような事態が発生したといっても過言ではないでしょう。
1996年に「健康住宅研究会」が組織され、有害物質の中の『優先取組物質』として3種の物質と3種の薬剤が選定されました。
 3物質
  @ホルムアルデヒド[HCHO]
   Aトルエン[C6H5CH3]
   Bキシレン[C6H4(CH3)]

 3薬剤
  C木材保存剤
   D可塑剤
   E防蟻剤

この『優先取組物質』をできるだけ低減することで室内空気汚染の現状を改善できると期待されています。
また、室内の空気環境に配慮して健康への影響を低減していくための住宅建築の基本となる、
 1.適切な材料選択  2.適切な施工  3.換気・通風への配慮
こうしたことに配慮した設計・材料選択が今後の課題となっていくと考えられます。
日常生活の上では、窓の開放によって自然換気を積極的に取り入れることや、給気口をできるだけ開けた状態にすること、室内のドアを開放して通気経路を確保すること、窓を閉め切る場合はキッチン換気扇を運転するなどの換気への配慮が重要です。また、生活の中には建築材料以外にも、室内空気汚染源となる可能性があるものもあり、それらをできるだけ持ち込まない、あるいは使用にあたっては換気に充分に注意する必要があると思われます。
テレビ・雑誌等で頻繁に報道されている『ホルムアルデヒド』は、化学物質の中でも揮発しやすい有機化合物です。WHO(世界保健機構)の分類は超揮発性有機化合物に位置づけされています。水やアルコールに溶けやすい性質があり、それを利用してホルマリン水溶液が生産されています。防腐剤として重宝され、また接着剤にも使用されています。このホルマリンが揮発して『ホルムアルデヒド』という化学物質となります。
■ホルムアルデヒドの濃度と影響(横浜国大:堀 雅宏教授作成)
濃 度 影          響
0.03ppm  目・鼻・喉に対する刺激を感じることはないとされています
0.05ppm前後  臭いを感じます
0.13〜0.45ppm  目への刺激が始まります
約0.5ppm  臭気のため不快感が起こります
2〜3ppm  鼻や喉に刺激が加わります
4〜5ppm  催涙が起こります
10ppm以上  正常な呼吸が困難になります
50〜100ppm  5〜10分間暴露で急性中毒を起こします
■ホルムアルデヒド室内環境基準値及び勧告値
種 別 設 定 者 濃  度
許容濃度  労働衛生安全法  0.5ppm
基 準 値  ミネソタ州  0.4ppm
勧 告 値  W H O  0.08ppm
 カリフォルニア  0.05ppm
 オランダ  0.1ppm
 デンマーク  0.12ppm
 スウェーデン  0.1〜0.4(天井値)ppm
ガイドライン  日本(厚生省)  0.08ppm
■厚生省によるホルムアルデヒドの室内濃度指針
ホルムアルデヒドの室内濃度指針値として、30分平均値で0.1mg/m3以下を提案
これは室温23度の下で、約0.08ppmに相当します。
■ホルムアルデヒドの性質・特徴
※無色 ※強い刺激臭 ※水に溶け易い ※エタノール・エーテルに可溶
■揮発性有機化合物の分類
WHO(世界保健機構)は、室内空気汚染源となる可能性のある有機化合物を沸点に応じて下の表のように分類しています。その中で、揮発性有機化合物(Volatile Organic Compounds : VOC)とは、沸点範囲として50〜100℃から240〜260℃の範囲のものを指します。例えば、ホルムアルデヒドは沸点がー19.2℃であって、WHOの分類では超揮発性有機化合物(VVOC)に分類されます。
■WHOによる室内空気汚染となる可能性のある有機化合物の分類
. 略 記 沸 点 範 囲
超揮発性有機化合物
Very Volatile(gaseous) Organic Compounds
VVOC <0℃〜50−100℃
揮発性有機化合物
Volatile Organic Compounds
VOC 50−100℃〜240−260℃
半揮発性有機化合物
Semivolatile Organic Compounds
SVOC 240−260℃〜380−400℃
■代表的有機化合物の分類
分類 物質名 分子量 沸点
VVOC ホルムアルデヒド 30 −19.2℃
VOC トルエン 92 110.7℃
キシレン 106.2 137〜144℃
ベンゼン 78 80.1℃
スチレン 104.1 145.1℃
SVOC リン酸トリブチル
(TBP)
266 289℃
フタル酸ジオクチル
(DOP)
391 370℃
■総揮発性有機化合物
一般的な定義としては、個々のVOC濃度の総量で、通常定量出来る数十種類にのぼる混合物の濃度を積算したものです。現在のところTVOCの実際的な定義は測定者によって多種多様です。
■壁紙製品標準規格(SV規格:Standard Value)
一般住宅、商業施設及びオフィスビル等に使用される壁紙製品で、快適・健康・安全を配慮した製品を供給することを目的としてこの規格を定めました。
SVマーク
■SV規格の規格値
NO. 試験項目 紙系壁紙 プラスチック系壁紙
ビニル壁紙 オレフィン系等壁紙
規格値 規格値 規格値
1 退色性(級) 4以上 同左 同左
2 耐摩擦(級) 乾摩擦 4以上 同左 同左
4以上 同左 同左
湿摩擦 4以上 同左 同左
4以上 同左 同左
3 隠ぺい性(級) 3以上 同左 同左
4 施工性 浮き・はがれがないこと 同左 同左
5 湿潤強度 N/1.5cm(kgf/1.5cm) 5.0(0.5)以上 同左 同左
5.0(0.5)以上 同左 同左
6※ ホルムアルデヒド(mg/L) 0.2以下 同左 同左
7 重金属
砒素 (mg/kg)
5以下 同左 同左
(mg/kg)
30以下 同左 同左
カドミウム (mg/kg)
5以下 同左 同左
クロム(VI) (mg/kg)
20以下 同左 同左
水銀 (mg/kg)
2以下 同左 同左
セレン (mg/kg)
10以下 同左 同左
8 塩化ビニルモノマー(mg/kg) 0.1以下 同左 同左
9 残留VOC
TVOC mg/g)
100以下 同左 同左
TEX芳香族 mg/g)
10以下 同左 同左
 (使用原材料)
10 安定剤 鉛、カドミウム、有機スズを含有する安定剤は、使用しない。
11 可塑剤 沸点が300℃以上の難揮発性可塑剤を使用する。ただしDBPは使用しない。
12 発泡剤 フルオロカーボン類は、使用しない。
 ※壁紙100g中のホルムアルデヒド12mgが0.05ppm以下に相当します。
ホルムアルデヒドは自然界の中にもある物質で、19世紀はじめから合成製造されている物質であり、無色で強い臭気を有し、皮膚や粘膜に対して強い刺激性を持っています。ホルムアルデヒドの室内濃度基準についてはWHO(世界保健機構)のガイドライン値、日本の厚生省の指針値共0.08ppm以下となっています。
一般的な人たちにおける明らかな刺激を感じてくる濃度は0.25ppm以上と言われており、それらの値の約1/3の濃度が指針値となっています。
SV商品についてはさらに安全性を高めるために、RAL-GZ479と同様これよりも低い0.05ppm以下の規格値としました。
SV商品の試験法として採用したRAL-GZ479の 3. 2. 7のWKI(ドイツウィルヘルム・クラウデッツ研究所)改良フラスコ法による12mg/100gのホルムアルデヒド量は、空間平衡濃度0.05ppm以下に相当します。(T. Salthammer,E.Schriever,R.Marutzky著「壁装材からの排出物。テスト方法と暫定的な結果」毒性・環境科学1993年第40巻121〜131頁)
重金属とは、アルミなどの軽金属に対し、金、白金、銀、クロム、カドミウム、鉛、鉄など、比重が4〜5以上の金属の総称です。
また、砒素とは、物理的金属に類似していますが、化学的性質は燐に類似している非金属です。
これらの重金属類(砒素を含む)のなかで毒性が強い物については、食品包装、玩具等で実施されている溶出試験がありましたが、壁紙製品に対する安全性については、法的な規制がありませんでした。
そこで、壁紙製品に関する重金属類の安全性について調査した結果、ドイツの品質検査規定(RAL)があり、SV規格の基準を決めました。試験
方法は当初、EN-71part-3 (欧州玩具規格の安全性)を基に溶出試験を採用しました。その後SV規格は廃棄のことを配慮してRALが新たに採用した材質試験(壁紙に含まれる重金属の全量を測定)を採用しています。そのため、溶出試験より厳しい基準となります。また、材質試験のほうが試験結果の数値が大きくなります。
VOC(Volatile Oraganic Compounds)の健康に対する影響が注目されております。
VOCの人体に対する影響は個人差が大きいものと言われておりますが、一般に化学物質過敏性等で問題になるVOC濃度はきわめて低濃度で有ります。
VOCによる室内空気汚染が問題になってきたため、WHO(世界保健機構)では室内環境を対象にした基準値をガイドラインとして発表しております。
また、TVOC(全揮発性有機化合物 Total Volatile Organic Compounds)はガスクロマトグラフという分析機器で分離定量された個々のVOCの総計を示すものです。
SV規格はRAL規格に準じ規格値を決めていますが、WHOガイドラインとの比較を下記にまとめてみました。
この表からSV規格はWHOのガイドライン値の1/3〜1/5と小さく設定されていることになります。
. SV規格値 WHOガイドライン値
規格値 チャンバー法 チャンバー法
TVOC 100μg/g 80μg/m3 300μg/m3
芳香族 TEX 10μg/g 8μg/m3 50μg/m3
※TVOCはSV規格の測定値100μg/gがチャンバー法で80μg/m3に相当する研究報告があります。
※芳香族TEXは10μg/gがチャンバー法では8μg/m3に相当します。
住宅などの建築物におけるVOCの発生源としては、接着剤、塗料、合板、プラスチック製の建材や家庭用品とともに壁紙等の内装材が上げられていますが、SV規格では、WHOのガイドラインと比較して充分低いレベルであり、安全性が高いといえる品質です。
2000年フランスのリヨン市で開催された国際ガン研究機関(IARC:WHOの付属機関)の評価会議で、これらの試験結果を参考にしてDOP(DEHPとも言う)の安全性に対する再評価が行われ、その結果従来のランク2B(ヒトに対する発ガン性がある可能性がある)からランク3(ヒトに対する発ガン性については分類できない。お茶や塩素処理した水道水と同じレベル)に改正され、事実上ヒトに対する発ガン性がないことが認められました。一方内分泌かく乱作用(いわゆる環境ホルモン)については現在国際的な評価・解析が行われています。可塑剤工業会ではDOPやDINP等について三菱化学安全科学研究所に委託して行ったエストロゲン活性試験の結果では、いずれも活性は認められませんでした。
壁紙の製造時、樹脂などの原材料は熱分解が進行すると変色を生じ、製品の外観を損なう恐れがあります。又、製品としては、光や酸素などの作用による経時劣化を受けやすく耐久性が低下する恐れもあります。
こうした製造時における変色の抑制や加工性の改善、また、製品の経時劣化を防止する目的で、安定剤が使用されます。壁紙製品規格協議会では、1998年4月1日のSV規格制定時よりドイツのRAL規格と同じく、安定剤には鉛、カドミウムをまた2001年1月からは有機スズの使用を禁止しており、安全性の高いカルシウム系や亜鉛系などの安定剤を使用しています。
発泡剤とは、加熱により気泡を発生しプラスチックの発泡体をつくる材料です。発泡剤の種類は、加熱により分解して窒素ガスなどを発生するタイプと過熱により膨張するタイプです。フルオロカーボンとは、メタン、エタンなどの炭化水素の中の水素をフッ素・塩素などのハロゲンで置換した化合物一般的にフロンと称されています。
1990年6月、今世紀中に特定フロンを全廃することを内容とする「オゾン層を破壊する物質に関するモントリオール議定書」の改定に基づいてSV規格ではフロン系発泡剤のフルオロカーボン類の使用を禁止しています。
 

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